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西村邸の想いと、愛すべきクラフトマンシップにふれる読み物です

有機農業が、日本でメジャーになる日

先週、記念すべき、初の海外からのお客さんが、宿泊してくれました。ドイツからのご夫婦で、大阪から入って、熊野古道を歩き、少し京都に滞在したあと、西村邸を見つけて奈良に戻ってきてくれたそうです。4泊5日という長期ステイだったけど、何から何まで喜んでくれて、一つ一つのコミュニケーションが、ぼく自身も楽しかった。
AirBnBのレビューに「なにより朝ごはんが最高だった!」と書いてくれたお客さんが、ひとつ残念そうに話していたことが、心に残っています。「日本って、まだまだオーガニックの食べ物が少ないのね。スーパーマーケットで見つけるのは難しそう。」ということ。
最近デンマークに行っていた友達の話では、向こうだと「オーガニック専門食料品店」というのは、日本よりずっと一般的なのだそうです。

 

日本では、まだまだ少ない、オーガニック=有機農業の生産物。単純に価格のハードルが高く、一度普通の食料品の価格に慣れてしまうと、有機農業の生産物を手にすることは、なかなか難しいものがあります。その価格差もあって、セレブが高級なスーパーで買うような、ある種の嗜好品的な見方をされているのだと感じています。
あと、「『オーガニック』と書いてあるものは美味しい。書いてあるだけで美味しそう。」と思っている人も、結構な数いるのではないでしょうか。作物本来の味が濃くなる、とかいうのは、あるかもしれませんが、個人的に、美味いという理由で選ぶものではないと考えています。これ、地味に厄介な点だと思うのですが、そんなことないですかね??

 

ぼく自身も「絶対オーガニックでなければ!!」という感じでは、ありません。というか、普段の生活で選ぶことは、ほとんどないです。そもそも、農業をするという時点で、相当に気合いの入ったことだと思うので、農薬を使おうが化学肥料を使おうが、基本的に農家さんには頭が上がらない。
西村邸も、まったく完全ではありません。使っている食材は、有機農業生産物の方が圧倒的に少ないです。まだまだ駆け出し。細々とやっていますし、コスト的に難しい…。

 

ただ、取り組もうとしていることは、ひとつあります。それは、提供する食事の量を少なくすること。
【毎日の茶飯膳】も【毎日のカレーライス】も、決して精進料理とか、断食道場のような粗食ではありません。朝食や昼食として、普通に食べて、満足してもらえる量だと思います。が、他の飲食店に比べると、間違いなく少ないはずです。カレーとか、マジで一瞬で食べ終えてしまう方もいらっしゃって、若干気まずいです…。
それでも、少なめの量で出す理由があります。ひとつは、若い世代と地元の方に向けて、650円という価格でやりたいからですが、もうひとつは、みんな食べすぎ&食べさせすぎだと考えているからです。

 

農薬や化学肥料は、必要とされています。どんな時間、どんな場所においても、これまでも、これからも、飢える人間が出ないように、必要とされているものです。ただその上で、人間(いまの日本人)は「食を求め過ぎている」と、ぼくは考えてしまう。
みんなが「いつでもどこでもうまいもんを腹いっぱい食いたい!!」と思っているうちは、有機農業は絶対にメジャーにならないでしょう。どこかで、「フレッシュトマトは冬には食べられないもの」とか、「今年は台風が多かったから、お米が少ないね」とか、そういう諦めが必要なんだと思います。
消費者がそれを諦められないうちは、農家さんも農協もドン!とたくさんつくって、ガン!とトラックに詰め込んで、バァン!と売りさばかないと、仕方ないのだと思います。
飲食店もです。原価を抑えるためにもたくさん仕入れ、たくさんたくさん注文をとって、「あーおなかいっぱい!いい店だったな!」と思ってもらわないといけない。そうしてなんとか営業を続け、自分たちは生きるために、また安い野菜を買ったりするのです。こうして、デフレ、疲弊が続いていってしまう…。

 

決して、高級な野菜を買いましょうではなく、無理して作られたもの、無理して売られているものを、極力買わない。そういうことを考えたいと、ぼくは思うのです。地のもの、季節のもの、成るに任せよ、という、本来の姿を尊重するのが有機農法なのだと、ぼくは認識しています。そして、これは食べ物に限らずです。
(そういう意味で、「有機」自体が、ひとつのグルメになってしまうのも、違うのではと思います。さっき厄介だと言ったのは、そういうこと。)

 

日本で消費のギアが下がるのには、まだ少し時間がかかると思います。いまは、よくなっていく過渡期にあると信じたい。簡単に答えは出ないけれど、いま生きている人間が、地球を使い切ってしまうこと(あえての表現です)は、どうやっても正当化出来ないはずです。
そのために、なにかできることを。まだまだ微力な西村邸ですが、一汁二菜には、そんな意味も、あったりなかったりします。

 

カレーに添える自家製ピクルス、2か月間きゅうりで作っていましたが、今日は蕪を買ってきてみました。頂いた柚子と、漬けてみようと思います。

 

そういえば、こういう映画祭が、この土日にあります。仕入れでお世話になっている生協さんや、お菓子屋さんが関わっていらっしゃいます。ぼくは西村邸でのイベントもあって参加できませんが、関心のある方はぜひ。
(映画は全然見てないので、ぼくが書いてることと食い違ってたら、なんかごめんなさい。ここに書いているのは、完全にぼく個人の見解です。)